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名古屋地方裁判所 昭和33年(わ)309号 判決 1965年10月26日

本籍

愛知県一宮市今伊勢町本神戸字北無量寺一、一三六番地

住居

名古屋市千種区堀割町二丁目二一番地

会社役員

成瀬洋三

大正八年三月一一日生

右の者に対する出資の受入預り金及び金利等の取締に関する法律所得税法各違反被告事件について当裁判所は、検察官赤池功出席のうえ審理してつぎのとおり判決する。

主文

被告人を懲役一年六月および判示第一の各罪につき罰金二万円および判示第二の(一)の罪につき罰金一〇〇万円、判示第二の(二)の罪につき罰金三〇〇万円に処する。

但し、この裁判確定の日から三年間右懲役刑の執行を猶予する。

右罰金を完納することができないときは金一万円を一日に換算した期間被告人を労役場に留置する。

訴訟費用は全部被告人の負担とする。

理由

(罪となるべき事実)

被告人は、

第一、(一) 昭和二九年一〇月初頃より名古屋市昭和区雪見町一丁目一八番地で、手形割引の方法による金銭の貸付又はその媒介をなす業を開始したが、昭和三二年五月三一日に至るまで大蔵大臣に対し右営業開始に関する所定の届出をなさず、

(二) 昭和三〇年四月三〇日から昭和三一年一二月二一日までの間前後七二回にわたり別紙犯罪一覧表記載のとおり、同表番号1から43までは名古屋市熱田区横田町二丁目二二番地株式会社藤田製作所において、同会社に対し、川村一男との間に、同表番号44から70までは同市中区鶴重町二丁目一九番地東京白煉瓦株式会社において、同会社に対し、花村欽二又は小室秀彌との間に、同表番号7172は同市中区南大津通り四丁目一番地喫茶店「シエル」において、株式会社伊藤鋳造所に対し、高須恒雄との間に、いずれも手形割引の方法による金銭の貸付を行うにあたり、割引料日歩を同表割引日歩欄記載のとおり定め、貸付の都度、右割引料に相当する金額(同表天引利息欄記載)を手形額面金額から天引して受領し、残額(同表交付額欄記載)を前記各会社に交付する契約を結び、以て一〇〇円につき一日三〇銭をこえる一日三五銭ないし四七銭の割合による利息(同表借受日歩欄記載)の契約をなし、

第二、昭和三一年四月頃までは名古屋市昭和区雪見町一丁目一八番地に、同年五月頃以降は同区汐見町五番地に居住し、手形割引の方法による金融業を営んでいたものであるが、所得税を免れようと企て、明確なる商業帳簿の備付記載をなさず、約束手形等の取立に際しては架空名義を使用する等の不正な手段を講じて、

(一)  昭和三〇年一月一日から同年一二月三一日までの間(昭和三〇年度)における被告人の所得税につき、同期間における総所得金額が少くとも六、九〇一、二四三円であつたにも拘らず、これを秘匿して所轄昭和税務署に対し所得税法所定の申告期限である同三一年三月一五日までに所定の申告をなさず、よつて右所得に対する所得税三、八〇五、二八〇円を不正に逋脱し、

(二)  昭和三一年一月一日から同年一二月三一日までの間(昭和三一年度)における所得税につき、同期間における総所得金額が少くとも一九、一四二、二二〇円であつたにも拘らず、これを秘匿して所轄昭和税務署に対し所得税法所定の申告期限である昭和三二年三月一五日までに所定の申告をなさず、よつて右所得に対する所得税一一、七三七、四三〇円を不正に逋脱し、

たものである。(別紙第一ないし第五表参照)

(証拠の標目)

判示全般の事実につき

一、被告人の当公判廷の供述

判示第一の各事実につき

一、被告人の検察事務官に対する昭和三三年二月一七日付、同月二四日付、同月二六日付(二通)、同月二八日付、 同年三月七日付各供述調書

一、愛知県商工部長古屋久雄作成の回答書

一、別紙第四表証拠欄記載の、東京白煉瓦株式会社、株式会社藤田製作所、株式会社伊藤鋳造所に関する各証拠

判示第二の各事実につき(全般)

一、被告人の検察官および検察事務官に対する各供述調書

一、被告人の大蔵事務官に対する各質問てん末書

一、第一三回公判調書中被告人の供述部分

一、第九回公判調書中証人谷高佐一の供述部分

一、大蔵事務官谷高佐一作成の手形整理カード

一、押収の代金取立通帳と題する手形明細帳一通(証九五号)、手形明細帳三通(証一三六、一四一、九六号)、代金取立手形預り証二通(証一三九、一四〇号)

判示第二の申告すべき所得金額につき

一、別紙第四表中、証拠欄記載の各証拠

(法令の適用)

被告人の判示第一の(一)の所為は、出資受入、預り金利等の取締に関する法律一二条一号、七条一項に、同(二)の各所為(別紙犯罪一覧表番号1から43まで、44から70まで、71と72はそれぞれ包括して)は、いずれも同法五条にそれぞれ該当するところ、同(二)の各罪につき所定刑中懲役刑を選択することとし、判示第二の各所為は、いずれも昭和四〇年法律第三三号所得税法附則三五条により適用される昭和三七年法律第六七号による改正前の旧所得税法六九条一項に該当するので各罪につき所定懲役刑および罰金刑を併科するところ、以上は刑法四五条前段の併合罪であるから、懲役刑については同法四七条本文、一〇条に従い、もつとも重い判示第二の(二)の罪の刑に法定の加重をなし、罰金刑について判示第一の(一)の罰金刑は同法四八条一項により右の懲役と併科することとし、判示第二の(一)、(二)の罪につき昭和三七年法律第四四号附則二条により、同法による改正前の旧所得税法七三条が適用される結果、右各罪については各刑にこれを科することとし、その刑期および所定金額の範囲内において、被告人を懲役一年六月および判示第一の各罪につき罰金二万円に、判示第二の(一)の罪につき罰金一〇〇万円、判示第二の(二)の罪につき罰金三〇〇万円に処し、刑法二五条一項を適用してこの裁判確定の日から三年間右懲役刑の執行を猶予し、被告人が右罰金を完納することができないときは刑法一八条により金一万円を一日に換算した期間被告人を労役場に留置する。

訴訟費用は、刑事訴訟法一八一条一項本文に則り全部被告人の負担とする。

よつて主文のとおり判決する。

(裁判長裁判官 野村忠治 裁判官 水谷富茂人 裁判官 郡司宏)

別紙犯罪一覧表

<省略>

<省略>

<省略>

<省略>

<省略>

(註)期間欄中かつこ内に記載した日数は割引計算日数と実際割引期間とが二日以上相違するものについて後者の期間を示したもの。従つて借受日歩の計算については、後者の期間によることとした。

第一表 昭和30年度収支計算書

<省略>

第二表 昭和31年度収支計算書

<省略>

第三表 税額計算書

<省略>

第四表 収支計算書内訳及びその証拠の標目

註 以下次の略号を用いる。

1 (株)…………… 株式会社

2 18公……… 第18回公判期日

3 18公調…… 第18回公判調書

4 <証>………… 証人の供述又は供述記載

5 <検>………… 検察官に対する供述調書

6 <大>………… 大蔵事務官に対する質問てん末書

7 <上>………… 上申書

8 <事>………… 検察事務官に対する供述調書

9 33.2.28…… 昭和33年2月28日

10 冒陳………… 検察官提出の冒頭陳述書

第1昭和30年度

<省略>

第二昭和31年度

<省略>

第五表 割引料収支明細表

註1 番号は、大蔵事務官谷高佐一作成の手形整理カードによつた。

2 日歩割引料の空欄の箇所は上記手形整理カードと同じである趣旨である。

3 前表に用いた略号は、この表においても用いることとする。

昭和30年度

<省略>

昭和31年度

<省略>

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